2018-05-10 13:00:00

☆非認知スキルの高め方☆

  

非認知スキルの高め方について 

 

~どんな学習や習い事が有効なのか~

 

 

今回も雑誌「週刊東洋経済」から話題提供です。「教育」の経済学PART②非認知スキルの高め方についてです。お子さまの教育に熱心な保護者の皆様には、有益な情報になるかと思います。

 

 【非認知スキルとは・・・】

IQ(知能指数)や学力など数値化が可能な能力を「認知スキル」と呼ぶのに対して、気質や性格など目に見えない力を総称して「非認知スキル」という。これまで教育の現場では、とかく認知スキルの向上が焦点となりがりちだったが、近年は非認知スキルが経済的・社会的な成功に大きな影響を及ぼすとういう研究成果が数多く報告され、世界的に注目を集めている。

 

 【将来の成功を左右する「やり抜く力」や「自制心」】 

 非認知スキルといっても、難しく考える必要はない。「思いやり」や「協調性」「やり抜く力」「社交性」「自制心」「勤勉性」など、人間が生きていくために大切な能力全般を指すと考えればいい。実は非認知スキルとは、日本の幼児教育が従来育んできたもののほかにならない。2000年度施行の「幼稚園教育要領」には、教育目標として「生きる力の基礎となる心情、意欲、態度」が掲げられており、遊びや先生・友達との触れ合いの大切さが指摘されている。

 

 前回の「教育を科学する」でも取り上げたように、経済学者や心理学者が、非認知スキルと将来性(社会的地位、所得や健康)との因果関係を、幼児の追跡調査などの結果から明らかにしている。 

 日本でセルフコントロール力に着目し、行動経済学の視点から研究を行っている大阪大学社会経済研究所の池田新介教授が大学生を対象に実施した調査でも、セルフコントロール力のない人(自己抑制ができない人)ほど不健康でたばこ・ギャンブルなどに依存し、仕事などの先送り傾向があるとの結果が出ている。セルフコントロール力の強い人は、将来の大きな報酬や目標のために、目の前の小さな報酬や誘惑に流されない。そのため「やり抜く力も強い傾向にある」と池田教授は言う。

 

 心理学の分野からも、セルフコントロール力やり抜く力が将来の成功に結び付くことは合理的に説明できる。心理学では人間の性格を次の五つに分類する。①経験への開放性②勤勉性③外向性④協調性⑤情緒不安定性。これらを性格特性の「ビッグファイブ」という。 

 やり抜く力やセルフコントロール力は、そのうちの勤勉性に当てはまる。早稲田大学文学学術院の小塩真司教授は「性格特性のビッグファイブのうち、職業上の成功など将来予測が可能なのは勤勉性だ」と強調する。小塩教授によると、勤勉性は寿命や過度の飲酒、喫煙習慣などに影響を与えるという。自分のセルフコントロール力がどれくらいなのかを知りたい人は池田教授が作成したチェックシートを活用すると自身や子どものセルフコントロール力の相対的なスキルレベルがわかるようになっている。もし自分や子どものセルフコントロール力が低くても、悲観することはない。池田教授は「意識すればセルフコントロール力は高めることができる」と言い切る。 

 そのためには「頑張れる水準を引き上げること」が大切で①習慣化②将来の目標に対する内発的な動機③家族や周囲の影響---3つがポイントという。習慣は「朝6時に起きる」「甘いものは食べない」など簡単なことからでよく、継続することで鍛えられる。また、将来の目標に向けてのモチベーションは、意志力の維持につながり、節約の利いた前向きな人が家族や周囲に多いと、自制のレベルが高まるという。

 

【就学前のポイントは「遊び」を通した学び】

 米シカゴ大学のヘックマン教授らは、特に幼少期には非認知スキルが伸びやすい時期があると指摘している。それは、その人の性格や特性の多くが幼少期に養われることからも、直感的に理解できる。であれば、大事なことは幼稚園や保育園での就学前教育や、幼児期での地域や家庭での育て方だ。「幼児教育が重視しているのは、多様な環境の中での『遊び』。主体的な遊びを通じて、何かに興味を持ったり没頭したり、人とかかわったりするのはとても重要なこと」。と幼児教育学の専門家で玉川大学大豆田啓友教授は話す。  

 とかく幼児教育といえば、英語や読み書き、計算など認知スキルの習得をイメージしがちであるが、それよりも大切なのは「遊びを通しての学びにほかならない」と大豆田教授は言う。画一的で受動的な学びではなく、自主性を大切にした能動的な遊び。これが子どもの「心情、意欲、態度」、つまり非認知スキルを高めることにつながる。

 

 【非認知スキルに関する脳科学の研究】

 幼児教育や早期教育、非認知スキルについては、教育の専門家に加えて、経済学者、心理学者、遺伝学者などから多くの知見が集まっている。そして、脳科学分野でも、早期教育に関する研究成果が発表されている。興味深いのは、不適切な行動を抑制したり、創造的または長期的な計画を立てることなどにかかわる「前頭前野」の発達は、ほかの領域よりもゆっくりで、20歳ぐらいまでは、こうした能力は十分伸ばせる可能性があるという報告である。これは重要な視点であり、学力などの認知スキルも鍛えることは可能だが、多くの研究結果から、IQなど認知スキルは810歳ぐらいまでの比較的早期に確立され、10代になってから高めるのは容易ではないことが明らかになっている。

それに対し、非認知スキルはある程度成長した後も、自らの意識一つで変えることのできる可能性がある。非認知スキルに関しては、今後さらに知見が集まり、解明されることが増えるはず。ただし、非認知スキルのほうが認知スキルよりも大切ということではない。それらは相互挫作用があり、認知を高めることが非認知スキルを引き上げることにつながる場合もあるだろう。

 ヘックマン教授の言葉を借りるもでもなく、「非認知スキルは認知スキルと同じくらい重要」なのである。人間の能力とは、この二つを合わせた「総合力」になるではないでしょうか。